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2022年3月14日月曜日

2020年度定例会開催記録

2021年3月14日に2020年度定例会が開催されました。


◆日時:2021年3月14日(日) 13時~16時半

◆オンライン開催(Zoomミーティング)

文献報告①
◆報告者:太田麻希子(立教大学)
◆質問者:鳥山純子(立命館大学)
◆文献:【検討文献第1章】Universal Access to Affordable Housing? Interrogating an Elusive Development Goal (Sussane Soederberg)
 
文献報告②
◆報告者:中村雪子(立命館大学 立命館アジア・日本研究機構)
◆質問者:大野聖良(日本学術振興会(RPD)、神戸大学)
◆文献:【検討文献第6章】Re-centring ‘Race’ in Development: Population Policies and Global Capital Accumulation in the Era of the SDGs
 
司会・趣旨説明:中村雪子(立命館大学 立命館アジア・日本研究機構)



下記、定例会の記録になります。

今回の定例会では、SDGs(持続可能な開発目標)をジェンダー視点からクリティカルに考えてみることをテーマにした読書会を開催しました。2回連続の企画の初回になります。当初昨年度末に計画していましたが、コロナ禍のため延期していたものです。
今回の内容は、SDGs(持続可能な開発目標)をクリティカルに議論している論文が収められているThe Politics of Destination in the 2030 Sustainable Development Goals(2017)から2本の文献を検討しました。

1本目の論文は、SDGsの目標11(住まい)に関係する内容で、グローバルな住宅目標と関連した重要な政策文書に焦点を当てたものでした。文書の分析の結果、ユニバーサルな住宅の課題を、① 国家の政策の失敗というだけ ではなくグローバルサウスのスラムに限定した問題としていること、② 住宅問題の著しい市場化が起きていることが明らかにされました。新自由主義的な政策がSDGsを通じて進行していることを批判的に実態把握し、オルターナティヴな住宅政策に取り組む必要があることが主張されています。報告者からは、住宅ローンの借り手に関して、移住やジェンダーの視点からコメントがありました。さらに、質問者から新自由主義をめぐっての論文の議論についてより複雑な理解が必要ではないかという指摘や、SDGs自体が新自由主義のより一層の進展に資するものになっているのではないかというラディカルな議論が提示されました。

2本目の論文は、現在の開発の枠組みをジェンダー化された人種の視点から再考する内容でした。自由主義・人種(ジェンダー化とセット)・資本蓄積の3つの要素が相互に関連し、植民地主義から継続して現在の開発の枠組みを作っていることが捨象されていることを問題視します。例として新自由主義の進展のもとフェミニズムの議論を換骨堕胎した性的自己決定を主要な軸とした人口政策が再び開発政策において盛んになっていることを分析します。その帰結として、新自由主義に親和的な人種化・ジェンダー化された「超勤勉な新自由主義的な起業家主体の生産」につながっていることが指摘され、結局のところ、SDGsは、植民地主義、そして、近代化発展主義の開発の時代を経て、なお、継続、もしくは強化されている資本蓄積に寄与するものとして構築され実践されていることが指摘される内容の論文でした。質問者からは、特に日本の若い女性を対象にしたフェミニズムやエンパワーメントをめぐえる近年の動きが新自由主義的な主体と親和性が高いのではないかといった議論が提示されました。

近年、日本社会においてもSDGsが企業を中心に取り上げられることが多くなっている中で、関心が高かったこともあり、全体の議論においても活発な議論が交わされました。

2017年2月11日土曜日

2016年度第1回定例会開催記録(2016年12月17日)


2016年12月17日に第1回定例会が開催されました。


日時:2016年12月17日(土) 16時~18時

場所:立教大学 池袋キャンパス ロイドホール五階第三会議室

報告者:小川真理子さん(日本学術振興会特別研究員(PD))

報告タイトル:東日本大震災と女性支援-宮城県A市におけるDV被害者支援を事例として-


下記、定例会の記録になります。


本報告では、2013年から2016年に東日本大震災被災地における女性支援をテーマとして行なった宮城県A市の調査結果の一部を主に紹介した。被災地では、女性被災者の雇用問題や経済状況の悪化、DV被害等が明らかになった。こうした状況に対して民間シェルターは全国ネットワークを駆使して支援者を同被災地に派遣し、24 時間の全国フリーダイヤル事業や同行支援、雇用創出等、女性や子どもの支援を行なってきた。報告では、仮設住宅での個別世帯における女性への暴力の危険性やDV被害者支援における関係機関の連携に関する課題を提起し、DV被害者の安全確保のための政策を提言した。
また、国際的な動向のひとつとして、2015年11月にオランダのハーグで開催された第3回世界シェルター会議について一部を紹介した。4日間の会議では、約120ヵ国から1000名を超える民間団体、政府、国連の関係者、専門家や研究者等が参加し、女性に対する暴力に関する共通課題について意見交換を行ない、暴力を根絶することの認識と対応を確認した。

質疑応答では、実際に女性支援に携わっている複数の参加者から被災地におけるDV被害者支援の課題の解決策について提示された。行政の男女共同参画行動計画や防災計画に女性の視点を取り入れること、そのためには会議等に女性メンバーが参加することが重要であるとの指摘があった。また、災害とジェンダーの視点から災害がDVが問題化される契機になりうるという指摘もあった。調査からは、未曾有の災害によって避難所へ逃れたことにより、初めて他の家族の様子を垣間見て自分が夫からDVを受けていたと気がつき、支援にアクセスした女性被災者が複数いることが明らかになった。こうした女性たちは夫から逃れ、中長期にわたってさまざまな支援を得て新たな生活を再建している。この点に関連して、災害時における女性のエンパワーメントの視点も含めて検討することが示唆された。本報告では、参加者全員が自身の経験や研究を通して今後の被災地における女性支援について考え、語り合う貴重な機会となった


会場の立教大学はクリスマスのイルミネーションが華やかでした

定例会後は、会場近くのタイ料理屋さんで懇親会を開催しました。
写真は、タイ在住歴のある参加者の方おすすめの豚肉料理コームヤーンです。







2016年1月25日月曜日

2015年度第2回定例会開催記録(2016年1月22日)


2016年1月22日に2015年度第2回定例会が開催されました。



日時:2016年122日(金) 18時~20
場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館302号室
報告者:李亜姣さん(お茶の水女子大学大学院博士後期課程ジェンダー学際研究専攻)
報告タイトル:異議を唱える女性グループ――現代中国土地開発による社会関係・秩序の再配置 



下記、定例会の記録になります。


本発表では、フィールド調査及びその結果の一部を主に紹介した。結果として、プレゼンの仕方、すなわちジェンダー学の領域内において外国人研究者がどのように非母語である日本語で政治・経済・法律・ジェンダーに絡んだ女性の土地問題を語ることができるかを考えるものになった。発表ではまず、フィールド調査の研究背景・先行研究・研究目的・研究方法を説明し、現代中国における農村女性の土地問題という課題の有意義性が確認された。次に、調査結果の一部が示され、参加者からの質問に対しての回答があった。最後に、調査の実感を語り、今後の調査計画が立てられた。日本人の研究者を中心とした参加者に向けての発表であることへの配慮が足りないことで、プレゼンの仕方についてフロアから具体的なアドバイスが出された。調査内容の重みを重視すると同時に、中国の土地改革に関する複雑な事情をどのように日本語で説明すれば理解しやすいか、という点はジェンダー学の越境性を考えるときに大きな課題であることが確認された。

 今回の論点は、発表者の研究内容だけではなく、人に伝える工夫を吟味するものだったこともあり、参加者全員が研究者向けの報告や調査対象者・女性民間組織への知の還元を考える機会となった。

冬の合間の陽だまりを楽しむにゃんこさん










2015年8月5日水曜日

2015年度第1回定例会開催記録(2015年6月21日)


2015年6月21日に第1回定例会が開催されました。



日時:621日(日) 14時~17
 
場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館302号室
 
報告者:鳥山純子さん(日本学術振興会特別研究員PD)
 
報告タイトル:
人から考えるフィールドの描き方
ー00年代カイロの女性私立学校教員を事例に
Presenting a field as writing on people:
Contesting characteristics of female private school teachers in Cairo at the turn of the century

下記、定例会の記録になります。


本発表は、博士論文の執筆過程を振り返り、論文執筆におけるフィールドデータと問題関心との関係を論じるものだった。発表ではまず、フィールド調査の方法論についてまとめた書籍を手掛かりに調査研究の過程を大まかに整理し、一つ一つの過程で調査者が抱く問題関心の批判的検討が不可欠であることが確認された。続いて、発表者自身が博士論文執筆のために行った調査を事例に、書籍で提示されているフィールド調査の「理想的な形」を実践する難しさを検討し、発表者の場合はその難しさの一端が、調査時における発表者自らの問題関心についての批判的検討の欠如に起因するものであったと説明がされた。さらに、不十分な「フィールドにおける思考」の結果として、当初の問題設定を大幅に変更せざるを得なかった経緯と、それを立て直すために、手持ちのデータからストーリーを描きだした論文製作の行程が語られた。そして暫定的な結論として、調査研究においては問題関心の批判的検討が恒常的になされる必要があること、とりわけ問題発見型のアプローチを援用する場合には、常にデータが持つ複数の解釈の可能性を意識し、調査者が従事する解釈のプロセスに自覚的になる必要が確認された。鳥山の報告を受け、フロアからは、問題関心の育て方についてそれぞれの参加者の興味や研究課程に沿った具体的な質問が出された。
今回の議題は、発表者の研究内容そのものではなく、そこに到る過程についてのものだったこともあり、参加者全員が研究上のつまずきや今後の展開に関する不安を具体的に語りながら議論をする機会となった。

朝もやに煙る山と三羽のツバメです。あまりに暑い日が続くので、和む画像を載せてみました。

2015年3月5日木曜日

2014年度第5回定例会記録(2015年2月7日開催)

春の足音が近づいてきましたね。
第5回定例会(2015年2月7日)の記録になります。

日時:2015年2月7日(14時30分~)

場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館304号室

報告者:久島桃代(お茶の水女子大学大学院博士後期課程)

題目:日本の過疎山村に移住する若い女性たちの経験

本定例会では、久島桃代さんより福島でのフィールドワークに基づいたご研究をご報告頂きました。

-以下、報告内容と質疑応答の要約になります。

◆報告内容
 日本の農山漁村の「限界集落」論・「消滅」論が、ジャーナリズムや政策の場で盛んに議論されるようになって久しい。その中で、昨年から農村研究者たちの間で徐々に注目されているのが、都市に居住する若者層の田園回帰である。本研究では,移住者が農山村の集落の再生に果たす役割を検証するため,福島県昭和村に移住した若い女性たちの地域づくりを事例とした。この村では,「からむし織体験生『織姫・彦星』事業」と呼ばれる伝統織物の後継者育成事業が1994年から実施され,20名もの定住者が現れている。報告では、若い女性を農村へと惹きつけ定着させるためのしくみや、彼女たちの地域での取り組み、そして課題を提起した。課題に関しては、村の既存のジェンダー関係が移住女性たちのライフスタイルと一致しない場合、彼女たちの地域的取り組みや地域で暮らすことそれ自体を困難にしていることを指摘した。

◆質疑応答
 インフォーマントのライフヒストリーから、移住や農村での暮らしが個々の女性たちにとってどのような意味を有しているのかを詳細に検証していることが評価される一方、彼女たちの語りが、地域や時代をいかに反映するものなのかは不明瞭であると指摘された。これを補うために、さらなる悉皆調査と統計的データの提示が要求された。

2014年11月4日火曜日

2014年度第4回定例会記録(2014年10月25日開催)

そろそろ秋も深まってきましたね。
さて、先日第4回定例会(10月25日)を開催しましたのでその概要を掲載します。

■日時:2014年10月25日 14時~16時

■場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館304

■報告者:鈴木亜矢子(お茶の水女子大学大学院博士後期課程)

■題目:(仮)女性の家族形成・結婚改姓に関する自己決定権再考

本定例会では、鈴木亜矢子さんより博士論文のためのご研究を報告頂きました。

--以下、報告と会場での議論の要約になります。


□今回の発表は「(仮)女性の家族形成・結婚改姓に関する自己決定権再考」と題した博士論文の構想の報告であった。報告者はこれまでの調査から、自ら積極的にではなく、いわば消極的に別姓という形態をとることになった女性たちに着目し、こうした女性たちの「姓」の自己決定権の保障の在り方についての研究を進めている。先行研究として、憲法上の自己決定権論については、家族形成の自己決定権として結婚、離婚、子どもを持つ権利など幅広い権利が包括されており、女性の人権についても十分な議論はない。そのため、人権論一般を発展させるためにも、女性の人権論を自己決定権という観点から論じていくべき必要性を論じた。会場からは、ベースとなる調査方法に対する質問や、憲法上の自己決定権に関する質問があった。また博士論文の構成については、社会構造や制度についても論文に盛り込んだ方がいいのではないかとのアドバイスがあった。自己決定権については様々な学問分野でも問題点が指摘されているため、今後の更なる研究の進展が望まれる。

2014年7月5日土曜日

2014年度第3回定例会記録(2014月6月28日開催)

2014年6月28日(土)に2014年度第3回定例会が開催されました。


・日時:2014年6月28日(土)13時~18
・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館3階307号室
そろそろ海が恋しい季節がやってきますね☆



報告1:工藤真紀(東洋英和女学院大学大学院国際協力研究科修士課程) 
タイトル:「インドのジェンダー暴力と「包摂」アプローチ――インドの現地NGOジャゴリが教えるものは何か?」
報告2土野瑞穂(お茶の水女子大学 リサーチフェロー)
タイトル:「『慰安婦』問題と『償い』のポリティクス――『女性のためのアジア平和国民基金』を中心に」


本定例会では、女性に対する暴力を共通項に、修士課程在籍中の工藤さんは修士論文のための研究報告を、土野さんは博士論文に基づいた報告をしてくださいました。


--下記、報告の要約になります。

工藤真紀さん(東洋英和女学院大学大学院国際協力研究科修士課程) 
タイトル:「インドのジェンダー暴力と「包摂」アプローチ――インドの現地NGOジャゴリが教えるものは何か?」
 インドの首都デリーにおいて、2004年から行われているデリーの市街を女性たちにとって安全な街にしようとする「セーフ・デリー・キャンペーン」キャンペーンが行われている。そのキャンペーンでは、現地NGO団体Jagoriが、 UN Womenや地方政府と協力して、「包摂」というポリシーに基づいて女性の社会参加を進めている。Jagoriは、デリーの市街地での活動や、女性の権利に関するワークショップを開くなど、女性の権利保護を訴えるアドボカシー活動を展開しているが、その活動の特筆すべき点は、「包摂」という基本理念ある。インドでジェンダー課題に取り組むNGOの戦略は、「トップダウン・アプローチ」から「ボトムアップ・アプローチ」へと変わってきたが、いまだにジェンダー暴力は根強く残っている。それに対して「包摂(inclusion)」を旗印にするJagoriの活動は、トップ・ダウンとボトム・アップを総合したより効果的なアプローチであることを論じた。質疑応答では、インドにおいて根強く残る、あるいは悪化している女性に対する暴力についての先行研究の更なるレビューの必要性や、分析方法に関する妥当性についてなどが指摘された。


土野瑞穂(お茶の水女子大学 リサーチフェロー)
タイトル:「『慰安婦』問題と『償い』のポリティクス――『女性のためのアジア平和国民基金』を中心に」

 博士論文の内容を抜粋・一部修正したものである本発表では、初めに「慰安婦」問題の解決を求めて20年以上にわたって継続されてきた日本国内外の運動を概観した後で、今日「女性のためのアジア平和国民基金」(略称アジア女性基金。以下同)を研究対象とする意義とその必要性が論じられた。次に、マーサ・ミノウの議論に立脚した本研究の分析視角についての説明がなされた。すなわち、いかなる対応措置も当該社会のあり方に規定されるという限界を踏まえた上で、被害者「個人」の痛みや苦しみとそれへの処し方に目を向けること、しかしその一方で、問題を「個人的なこと」として終わらせてはならず/終わらせることはできず、元「慰安婦」の女性たちそれぞれの被害を歴史的文脈に位置づけた上で「償い」の措置を考えなければならないという視点に立つことが提示された。その分析視角のもとで、アジア女性基金の発足から解散までの一連の過程について、アクターたちの相互作用に着目して考察が行われた。最後に、アジア女性基金を教訓として示唆される、「償い」に必要な要件が示された。質疑応答では、研究手法の説明と議論の提示方法について意見・提案がなされたり、「慰安婦」問題の歴史的背景や「慰安婦」問題をめぐる今日の日本の状況について活発な議論がなされた。



2014年6月5日木曜日

2014年度第2回定例会記録(2014月5月24日開催)

2014年5月24日(土)に2014年度第2回定例会が開催されました。



・日時:2014年5月24日(土)14時~17時
初夏の空の下、うつぎの花とオリーブ
・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館3階304号室 


報告者:熊田陽子(日本学術振興会特別研究員-SPD)
タイトル:『「おんなのこ」として性風俗世界に生きる―ある東京の無店舗型SMクラブを通して見た都市的“性”様式に関する研究』


本定例会では、今年3月にお茶の水女子大学より博士号を取得された熊田陽子さんに、博士論文の内容を基に報告していただきました。



--下記、報告の要約になります。

報告者:熊田陽子(日本学術振興会特別研究員-SPD)
タイトル:『「おんなのこ」として性風俗世界に生きる―ある東京の無店舗型SMクラブを通して見た都市的“性”様式に関する研究』

要約:
博士論文の内容を一部修正する形で構成された本発表では、最初に、性に関する研究の意義・意味と、都市世界の性をテーマとするに至った経緯について説明がなされた。その後に、発表者が長期的なフィールドワークを行ってきた東京都市部のSMクラブ(X店)の日常について、主に女性従業者(発表においては「おんなのこ」)の視点から、演技(プレイ)と「遊び」(プレイ)を軸に考察が行われた。そのうえで、「おんなのこ」として他者と関係を形成するにあたって欠かせない「都市的なる『自己』」の構築(これには「自己」の切断と接合の実践が伴う)について、人類学をはじめとした「自己」の理解を批判的に検討しつつ論じられた。更にその理解に基づき、2人の「おんなのこ」の生に特化した詳細な分析が行われた。質疑応答では、全体の構成をよりわかりやすくするための提案がなされたり、「性とは何か」という重要な問いについての意見が提示されるなど、活発な議論が展開された。


2014年5月10日土曜日

2014年度第1回定例会記録(2014月4月12日開催)

201412日(土)に2014年度第1回定例会が開催されました。


・日時:201412日(土)13時半~17時半
・場所:お茶の水女子大学文教育学部号館304号室



■報告1:平野幸子(東洋英和女学院大学大学院 人間科学研究科修士課程)
タイトル:「家族性大腸腺腫症(FAP)女性の妊娠・出産・育児にまつわる支援への一考察」
■報告2:多田利恵子(東洋英和女学院大学大学院 人間科学研究科修士課程)
タイトル:「人身取引廃絶レジームの展開と課題――日本の事例を中心として」人身取引廃絶レジームの展開と課題――日本の事例を中心として人身取引廃絶レジームの展開と課題――日本の事例を中心として人身取引廃絶レジームの展開と課題――日本の事例を中心として

4月半ばだったので、ハナミズキもまだ開きかけでした

本定例会では、修士課程在籍中のお2人に、それぞれ取り組んでいる修士論文の内容を報告していただきました。主に医療の分野で研究が蓄積されてきた平野さんの研究に関しては、社会科学的かつジェンダーの視点から研究を発展させるために、主に研究手法に関して議論がなされました。また、日本における人身取引対策と国際的な潮流にかい離があることに問題意識を持って研究に取り組んでいる多田さんの報告では、幅広い領域にまたがる問題構成に対して、いかに具体的な事例から意義ある議論が可能か意見が交わされました。





--下記、報告の要約になります。

□平野幸子さん(東洋英和女学院大学大学院 人間科学研究科修士課程)
報告タイトル:『家族性大腸腺腫症(FAP)女性の妊娠・出産・育児にまつわる支援への一考察』
 家族性大腸腺腫症(FAP)は、1020歳頃から、大腸に多数の腺腫を発生し、放置するとほぼ100%大腸がんを発生する常染色体優性遺伝疾患である。治療法の一つには、がんが発生する前に、予防的に全大腸を摘出する手術がおこなわれることがある。手術を行うことにより、女性の生殖に影響することが分かっている。報告者は患者会への継続的参加経験から、FAPには遺伝性の病であることに附随して女性に特有の困難が生じているのではないかと着想し、研究に至ったものである。本報告では、患者会が発刊するニューズレターに掲載された記事を資料として、家族性大腸腺腫症女性の生殖に関連する問題や困難な状況を分析・考察した。次世代へ引き継がれ遺伝することは、女性の身体を通して行われる生殖に関連することから、女性に特化した支援の重要性を論じた。質疑応答では、女性の困難さや状況をさらに明らかにしていくために、患者会そのものの設立経緯や活動内容に関する追加調査の必要性が指摘された。


□多田利恵子さん(東洋英和女学院大学大学院 人間科学研究科修士課程)
報告タイトル:『人身取引廃絶レジームの展開と課題――日本の事例を中心として』
国連での人身取引禁止議定書採択以降、国際的に積極的な取り組みが進められる中、日本も人身取引対策に取り組んできた一方、その取り組みの速度や方向性は国内外から批判されてきた。報告者は、まず、国際的な人身取引廃絶の取り組みの展開を論じた上で日本の取り組みの現状を提示した。そのうえで、日本が人身取引廃絶レジームに適応しようとしつつもできていない要因を、ジェンダー的視座から日本の文化的社会的特性を考察することで明らかにしようと試みた。フロアからは、比較対象国の選択や分析視点、日本のNGOの展開を通して日本を研究する可能性などについて指摘があり、議論が展開した。



2014年3月22日土曜日

2013年度第6回定例会記録(2014年3月22日開催)

2014年3月22日(土)に2013年度第6回定例会が開催されました。

・日時:2014年3月22日(土)1400~1700
・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館3階304号室 



報告:山本沙希(お茶の水女子大学 大学院博士後期課程)
タイトル:「アルジェリアにおける女性の組織化と地域開発:インフォーマル経済とアソシアシオンの関係から」

今回の定例会では、報告者は1人でしたが、なかなか聞くことができないアルジェリアにおける女性組織の事例報告ということで、質疑応答も含め約3時間の会となりました。北アフリカのイスラム圏でありポスト・コンフリクトという特徴ももつ調査地の詳細、調査対象女性組織の特徴や、また、マルチサイテッドな調査の試みでもあったため、それらの点に関心が集まりました。


下記、報告の要約になります。


本定例会では、アルジェリアの首都アルジェ旧市街で活動を展開する女性組織において、報告者が行ったインタビュー調査結果を中心に報告が行われた。報告者は、アルジェリア都市部で女性組織の活動が展開されてきた経緯を、事実上の内戦状態にあった1990年代初頭以降の情勢との関わりから論じたうえで、なかでも旧市街の女性組織は、地縁や密な人間関係によって成る「コミュニティ」に近いものであると位置づけた。さらに家内で行っている手工芸を主とする女性たちの活動をインフォーマル経済の一形態として捉え、女性たちにとっての活動の意義を明らかにする試論を提示した。

定例会当日はいい天気で、
白木蓮が満開でした



2013年12月21日土曜日

2013年度第5回定例会開催記録

20131221日(土)に2013年度第5回定例会が開催されました。


・日時:20131221日(土)13時半~18時半
・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館3304号室

■報告1:李小妹さん(お茶の水女子大学 大学院博士後期課程)
タイトル:「中国における少数民族の身体とジェンダー」
■報告2:小川真理子さん(お茶の水女子大学リーダーシップ養成教育研究センター)
タイトル:「民間女性団体による暴力被害女性への支援の現状と行政との「連携」


総評:
李さんは中国におけるテーマパークと都市空間における少数民族の実践、小川さんは日本におけるシェルター活動の現状に関して、オリジナルの調査結果から論じた。小川さんの報告に関しては、様々な意味合いで調査方法やその公開に困難が伴う研究であるため、フィールドワークを行う研究者に共通の調査倫理に関して、参加者からコメントが多くあがった。李さんの報告は人文地理の理論に依拠するものであったが、本定例会では聞くことが少ない空間論に関して、参加者から熱心な質問が向けられた。この議論から、シェルターを空間論からとらえる研究の可能性や、フェミニズムが女性の空間を求める運動を含む側面をもつことにまで話が展開した。フィールド、テーマ共に異なる2つの報告であったが、会の終盤になると、ジェンダー、マスキュリニティ、ナショナリズムなど共通する切り口から活発な議論がなされた。



---下記、報告の要約になります。

□李小妹さん(お茶の水女子大学 大学院博士後期課程ジェンダー学際研究専攻)
報告タイトル:『中国における少数民族の身体とジェンダー』
李さんは、中国広東省深圳市にあるテーマパークを人文地理学の領域で研究を続けてきました。

今回の報告では、はじめに、中国における深圳という都市空間を、中国のモダニティの独自性の一例として位置づけ、同地におけるテーマパークの展開を中国の国家像、国民像、モダニティを表象する空間として説明した。さらに、テーマパークの一つである「深圳中国民俗文化村」における少数民族の展示と表象代表であるワ族をとりあげた。李さんは、深圳における企業での勤務経験やその後のフィールドワークによるデータから、ワ族の「深圳中国民俗文化村」でのステージパフォーマンスや都市空間における実践のありようをジェンダー/セクシュアリティの視点から分析する試論を提示した。



□小川真理子さん(お茶の水女子大学リーダーシップ養成教育研究センター)
『民間女性団体による暴力被害女性への支援の現状と行政との「連携」』
小川さんは、20129月に提出された日本の民間シェルターの役割とDV被害者支援に関する博士論文の内容を基にして報告して下さいました。


「シェルター」という言葉は、一般的なものになりつつあるが、女性達が設立した民間シェルターに関しては、利用者や支援者の安全が一義的な命題であるので、その活動の内実が研究対象になる事は多くなかった。小川さんは博士論文において、民間シェルターへの質問紙調査や民間・行政へのインタビュー調査を通して民間シェルターの支援活動、DV被害者支援の現状と課題を明らかにした。本報告では、特に、民間シェルターと行政との「連携」に関して、調査による独自のデータから検討し今後の課題を論じた。調査結果では、「連携」に齟齬をもたらす一つの要因は、DV法上の「連携」の位置づけが明確でない事が看取された。現状では体制が未確立のままDV対応が進められてきた事に問題がある。被害者にとっては、公的支援も民間の支援も不可欠なものである。両者の支援は重なる点も多いが、民間による支援の独自性を考慮すると、民間は、その機動性や柔軟性を活かし、行政と「連携」しながらDV被害者支援を行なうのが望ましい形であると結論付けた。

2013年11月16日土曜日

2013年度第4回定例会記録(2013年11月16日開催)

20131116日(土)に2013年度第4回定例会が開催されました。


・日時:20131116日(土)13時半~18時半
・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館3304号室

報告1:中村雪子(お茶の水女子大学 大学院博士後期課程)
タイトル:「インドにおける開発プログラムとしての「女性酪農協同組合」試論:ガバナンスとエンパワメントの視点から」
報告2:雑賀葉子(お茶の水女子大学 大学院博士後期課程)
タイトル:「ポストコンフリクトの状況を考慮したジェンダー・クオータ制の政治代表に対する影響分析について」


本定例会では、「ガバナンスとジェンダー」を共通テーマに、先行研究のレビューを中心とした2つの報告がなされた。「ガバナンス」が共通項ではあったが、フィールド、対象、分析の方法論と異なる点の多い報告となった。同時に、異なる点が多かったことから、「ガバナンスとジェンダー」研究の射程の広がりが感じられる定例会となったともいえる。



---下記、報告の要約になります。

中村雪子さん(お茶の水女子大学 大学院博士後期課程)
報告タイトル:『インドにおける開発プログラムとしての「女性酪農協同組合」試論:ガバナンスとエンパワメントの視点から』
報告者は、長年インド・ラージャスターン州で展開する女性酪農協同組合を対象にフィールドワークを続けてきた。近年では、特に村落/集落から州レベルにいたる酪農協同組合組織全体におけるガバナンスへの女性の参加状況を、法体制、経済体制、さらにグローバルかつ国家の開発政策の変化などから分析する研究を進めている。本報告では、Aradhana SharmaParadoxes of EmpowermentDevelopment, Gender and Governance in Neoliberal Indiaを先行研究として取り上げた。Global Assemblageという用語をてがかりに、開発とジェンダーの領域における「ガバナンス」と「エンパワメント」との関係性を批判的に分析するための方法を検討した。



雑賀葉子さん(お茶の水女子大学 大学院博士後期課程)
報告タイトル:『ポストコンフリクトの状況を考慮したジェンダーク・オータ制の政治代表に対する影響分析について』
報告者は東ティモールの国政選挙におけるジェンダー・クオータ制についての研究を進めている。本報告会においては、Susan Franceschet, Mona Lena Krook and Jennifer M. Piscopo(The Impact of Gender Quotasを先行研究として報告した。本書では、クオータ制導入によって政治的代表、すなわち記述的代表、実質的代表、象徴的代表がどのように形成されたかを分析し、クオータ制賛成派が主張する目的を達成しているのか、あるいは反対派の主張する結果となっているのかを検証している。事例としてフランス、アルゼンチン、ウガンダ、モロッコ、英国、ブラジル、南アフリカ、アフガニスタン、ベルギー、メキシコ、ルワンダ、インドの12か国を取り上げる。クオータ制の有効性が実証的体系的に検証されていないことに対して、本書は多様な国を事例に取り上げ、そのインパクトを比較分析しており、意義は大きい。しかし、事例には90年代に紛争を終結し政治的民主化の経験の浅い国々も含まれている。政治的民主化の経験を分析枠組みに含める必要性や含める内容についての考察を報告した。