2014年11月4日火曜日

2014年度第4回定例会記録(2014年10月25日開催)

そろそろ秋も深まってきましたね。
さて、先日第4回定例会(10月25日)を開催しましたのでその概要を掲載します。

■日時:2014年10月25日 14時~16時

■場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館304

■報告者:鈴木亜矢子(お茶の水女子大学大学院博士後期課程)

■題目:(仮)女性の家族形成・結婚改姓に関する自己決定権再考

本定例会では、鈴木亜矢子さんより博士論文のためのご研究を報告頂きました。

--以下、報告と会場での議論の要約になります。


□今回の発表は「(仮)女性の家族形成・結婚改姓に関する自己決定権再考」と題した博士論文の構想の報告であった。報告者はこれまでの調査から、自ら積極的にではなく、いわば消極的に別姓という形態をとることになった女性たちに着目し、こうした女性たちの「姓」の自己決定権の保障の在り方についての研究を進めている。先行研究として、憲法上の自己決定権論については、家族形成の自己決定権として結婚、離婚、子どもを持つ権利など幅広い権利が包括されており、女性の人権についても十分な議論はない。そのため、人権論一般を発展させるためにも、女性の人権論を自己決定権という観点から論じていくべき必要性を論じた。会場からは、ベースとなる調査方法に対する質問や、憲法上の自己決定権に関する質問があった。また博士論文の構成については、社会構造や制度についても論文に盛り込んだ方がいいのではないかとのアドバイスがあった。自己決定権については様々な学問分野でも問題点が指摘されているため、今後の更なる研究の進展が望まれる。

2014年8月21日木曜日

ラウンド・テーブル参加のお知らせ@国際ジェンダー学会2014年大会(2014年9月6日~7日、静岡大学)


 暑い日が続きますね。

今年度の国際ジェンダー学会大会が9月6日(土)~7日(日)にかけて、静岡大学で開催されます。本分科会も下記内容で、ラウンド・テーブルに参加します。

大会全体のプログラムは、下記よりご確認いただけます。
http://isgsblog.blogspot.jp/

参加プログラム:ラウンド・テーブル(9月6日13時開始)
タイトル:イスラームは女性を抑圧するのか?
企画:「開発とジェンダー」分科会(事務局:中村雪子・太田麻希子)
話題提供者:
・鳥山純子(東京大学東洋文化研究所 特任研究員・東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所 ジュニアフェロー)
・嶺崎寛子(愛知教育大学)
・山本沙希(お茶の水女子大学大学院)
司会:大野聖良(日本学術振興会 特別研究員)




タイトルにあるように、今回のラウンド・テーブルでは、しばしば女性に対する抑圧の象徴のように取り上げられる「イスラーム女性」に関して、議論を行います。話題提供者の3名がそれぞれイスラーム圏と言われる地域において行ってきた文化人類学的調査を基に、個別具体的な「イスラーム女性」の有りようを提示します。そのうえで、一般的にも流布され学術的にも頻出する「イスラーム」と「イスラーム女性」をめぐる表象や言説が孕む問題点を議論していく予定です。

報告は、下記のトピックにそって議論が行われる予定です。


1.ジェンダー・オリエンタリズムの向こう側―ムスリム女性の表象がはらむ問題と罠

(嶺崎)

2.組織化にみる現代アルジェリア女性の歩み―女性支援団体の複合的機能

(山本)

3.00年代カイロのムスリマ(イスラーム教徒女性)的日常―20代女性の自己成型に見るイスラーム

(鳥山)

4.イスラームを使ったエンパワーメント―現代エジプト女性の自己承認をめぐって

(嶺崎)

5.ブラックボックス化する『イスラーム』―なぜ『イスラーム』はわかりにくいのか(鳥山)



先月末の打合せにて、一足早く議論の内容を垣間見ることになりましたが、豊富なデータに基づいた三者三様の報告内容を基点に、現代日本に生きる私たちの有りようにも問題を突きつけるアクチュアルな議論が展開される予感です♪


みなさま、ぜひ足をお運びください!

2014年7月5日土曜日

2014年度第3回定例会記録(2014月6月28日開催)

2014年6月28日(土)に2014年度第3回定例会が開催されました。


・日時:2014年6月28日(土)13時~18
・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館3階307号室
そろそろ海が恋しい季節がやってきますね☆



報告1:工藤真紀(東洋英和女学院大学大学院国際協力研究科修士課程) 
タイトル:「インドのジェンダー暴力と「包摂」アプローチ――インドの現地NGOジャゴリが教えるものは何か?」
報告2土野瑞穂(お茶の水女子大学 リサーチフェロー)
タイトル:「『慰安婦』問題と『償い』のポリティクス――『女性のためのアジア平和国民基金』を中心に」


本定例会では、女性に対する暴力を共通項に、修士課程在籍中の工藤さんは修士論文のための研究報告を、土野さんは博士論文に基づいた報告をしてくださいました。


--下記、報告の要約になります。

工藤真紀さん(東洋英和女学院大学大学院国際協力研究科修士課程) 
タイトル:「インドのジェンダー暴力と「包摂」アプローチ――インドの現地NGOジャゴリが教えるものは何か?」
 インドの首都デリーにおいて、2004年から行われているデリーの市街を女性たちにとって安全な街にしようとする「セーフ・デリー・キャンペーン」キャンペーンが行われている。そのキャンペーンでは、現地NGO団体Jagoriが、 UN Womenや地方政府と協力して、「包摂」というポリシーに基づいて女性の社会参加を進めている。Jagoriは、デリーの市街地での活動や、女性の権利に関するワークショップを開くなど、女性の権利保護を訴えるアドボカシー活動を展開しているが、その活動の特筆すべき点は、「包摂」という基本理念ある。インドでジェンダー課題に取り組むNGOの戦略は、「トップダウン・アプローチ」から「ボトムアップ・アプローチ」へと変わってきたが、いまだにジェンダー暴力は根強く残っている。それに対して「包摂(inclusion)」を旗印にするJagoriの活動は、トップ・ダウンとボトム・アップを総合したより効果的なアプローチであることを論じた。質疑応答では、インドにおいて根強く残る、あるいは悪化している女性に対する暴力についての先行研究の更なるレビューの必要性や、分析方法に関する妥当性についてなどが指摘された。


土野瑞穂(お茶の水女子大学 リサーチフェロー)
タイトル:「『慰安婦』問題と『償い』のポリティクス――『女性のためのアジア平和国民基金』を中心に」

 博士論文の内容を抜粋・一部修正したものである本発表では、初めに「慰安婦」問題の解決を求めて20年以上にわたって継続されてきた日本国内外の運動を概観した後で、今日「女性のためのアジア平和国民基金」(略称アジア女性基金。以下同)を研究対象とする意義とその必要性が論じられた。次に、マーサ・ミノウの議論に立脚した本研究の分析視角についての説明がなされた。すなわち、いかなる対応措置も当該社会のあり方に規定されるという限界を踏まえた上で、被害者「個人」の痛みや苦しみとそれへの処し方に目を向けること、しかしその一方で、問題を「個人的なこと」として終わらせてはならず/終わらせることはできず、元「慰安婦」の女性たちそれぞれの被害を歴史的文脈に位置づけた上で「償い」の措置を考えなければならないという視点に立つことが提示された。その分析視角のもとで、アジア女性基金の発足から解散までの一連の過程について、アクターたちの相互作用に着目して考察が行われた。最後に、アジア女性基金を教訓として示唆される、「償い」に必要な要件が示された。質疑応答では、研究手法の説明と議論の提示方法について意見・提案がなされたり、「慰安婦」問題の歴史的背景や「慰安婦」問題をめぐる今日の日本の状況について活発な議論がなされた。



2014年6月5日木曜日

2014年度第2回定例会記録(2014月5月24日開催)

2014年5月24日(土)に2014年度第2回定例会が開催されました。



・日時:2014年5月24日(土)14時~17時
初夏の空の下、うつぎの花とオリーブ
・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館3階304号室 


報告者:熊田陽子(日本学術振興会特別研究員-SPD)
タイトル:『「おんなのこ」として性風俗世界に生きる―ある東京の無店舗型SMクラブを通して見た都市的“性”様式に関する研究』


本定例会では、今年3月にお茶の水女子大学より博士号を取得された熊田陽子さんに、博士論文の内容を基に報告していただきました。



--下記、報告の要約になります。

報告者:熊田陽子(日本学術振興会特別研究員-SPD)
タイトル:『「おんなのこ」として性風俗世界に生きる―ある東京の無店舗型SMクラブを通して見た都市的“性”様式に関する研究』

要約:
博士論文の内容を一部修正する形で構成された本発表では、最初に、性に関する研究の意義・意味と、都市世界の性をテーマとするに至った経緯について説明がなされた。その後に、発表者が長期的なフィールドワークを行ってきた東京都市部のSMクラブ(X店)の日常について、主に女性従業者(発表においては「おんなのこ」)の視点から、演技(プレイ)と「遊び」(プレイ)を軸に考察が行われた。そのうえで、「おんなのこ」として他者と関係を形成するにあたって欠かせない「都市的なる『自己』」の構築(これには「自己」の切断と接合の実践が伴う)について、人類学をはじめとした「自己」の理解を批判的に検討しつつ論じられた。更にその理解に基づき、2人の「おんなのこ」の生に特化した詳細な分析が行われた。質疑応答では、全体の構成をよりわかりやすくするための提案がなされたり、「性とは何か」という重要な問いについての意見が提示されるなど、活発な議論が展開された。


2014年5月31日土曜日

2014年度第3回定例会開催のお知らせ(2014年6月28日[第4土曜日])

2014年6月28日(土)に2014年度第3回定例会を開催いたします。


今回は、東洋英和女学院大学修士課程所属の工藤真紀さんと、お茶の水女子大学リサーチフェローの土野瑞穂さんが報告者です。


工藤さんは現在取り組んでいる修士論文に関して、土野さんは、今年3月に提出された博士論文の内容をご報告いただきます。
・工藤さん「アドボカシー・キャンペーンはどのように社会的認知されるのか―「セーフ・デリー・キャンペーン」の事例から」
土野さん「『慰安婦』問題と『償い』のポリティクス―『女性のためのアジア平和国民基金』の『償い事業』に着目して


詳細は下記情報をご参照ください。
そろそろ紫陽花の季節ですね

どなたでも、関心のある方は参加可能です。
ご出席希望の方は資料準備の都合上、6月25日(水)までに、devgen.isgs@gmail.comまでご連絡いただけますと幸いです。


どうぞよろしくお願い致します。


2013年度devgen事務局(太田・中村)

devgen.isgs@gmail.com




===転載可・ここから===


2014年度 国際ジェンダー学会「開発とジェンダー」分科会 第3回定例会ご案内


・日時:2014年6月28日(土)13時~18時

・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館3階307号室

■第1報告

報告者:工藤真紀(東洋英和女学院大学大学院 国際協力研究科修士課程)
タイトル:「アドボカシー・キャンペーンはどのように社会的認知されるのか―「セーフ・デリー・キャンペーン」の事例から」
 <要旨>
 現在、インドの首都デリーにおいて、「セーフ・デリー・キャンペーン」という、デリーを女性たちにとって安全な街にしようとするアドボカシー・キャンペーンが行われている。そのキャンペーンは、現地NGO団体ジャゴリ (JAGORI awaken women”の意味、以下Jagoriと称す) が主体となって、2004年から開始され、女性の権利に関するワークショップを開くなど、女性の権利保護を訴えるアドボカシー活動を展開している。インドでは、古くから上下の身分関係で厳格に分けたカーストという制度が残っている。インド憲法では、カースト制度による差別を禁止してはいるものの、いまだに国民の間ではカーストに依る差別が残留している。また、インド政府は憲法改正などを行い、女性差別の撤廃をうたってはいるが、それは専門家の意見や女性団体側の意見を十分に反映したものではなく、実効性に欠けるものとなっている。ダウリー(結婚持参金)に関する暴力、サティ(寡婦殉死)、幼児婚に伴う暴力、レイプなど、女性に対する暴力は極めて重大であり、深刻である。そのような状況の中で、「セーフ・デリー・キャンペーン」が行うアドボカシー・キャンペーンが社会的にどのように認知され、人々の行動に変化をもたらしているのかについて調査、考察する。



■第2報告
報告者:土野瑞穂(お茶の水女子大学 リサーチフェロー)
タイトル:「『慰安婦』問題と『償い』のポリティクス―『女性のためのアジア平和国民基金』を中心に」
<要旨>
 本研究は、日本政府主体による「慰安婦」問題解決の方法やあり方を、日本社会という文脈の中で具体的に検討することを課題とする。この課題を達成するために、日本政府による対応措置としては事例とも位置付けられ得る「女性のためのアジア平和国民基金」(略称アジア女性基金。以下同)に着眼点を見出し、同基金の発足(1995年)から解散(2007年)を経て今日に至るまでの一連の過程を分析することを本研究の目的とする。具体的には、アジア女性基金は、誰のどのような意図に基づいて発足したのか、実施した事業は元「慰安婦」や運動にどのような影響を与えたのか、そしてその後の「慰安婦」問題において基金はどのような位置づけとなっているのかを明らかにすることである。アジア女性基金以降、日本政府は「慰安婦」問題に対して何の対応もしておらず、さらに日本の運動はアジア基金発足以降、その是非をめぐる対立に囚われ続けている。こうした状況を打開するための試みとして、本研究ではアジア女性基金をめぐる問題を実証的に分析し、「慰安婦」問題の解決に向けた示唆を引き出すことを目指す。


出席の方は、資料準備の都合上6月25日(水)までに下記アドレスまでご連絡いただければ幸いです。


email: devgen.isgs@gmail.com(太田・中村)



*会場最寄り駅

http://www.ocha.ac.jp/access/index.html
東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅下車
東京メトロ有楽町線「護国寺」駅下車

*当日は、正門よりお入り下さい。(南門は閉門しておりますのでご注意下さい)

*入構の際、身分証明書をご提示の上「開発とジェンダー」分科会とおっしゃってください。
*会場は正門から見て正面のキャンパスマップ中①になります。建物の中に入りましたら、左手に曲がって道なりに行くと教室があります。
http://www.ocha.ac.jp/access/index.html#no3

今年度の定例会は、研究報告と研究書の講読会を下記のように予定しています。


■2014年度定例会予定



・第4回 2014年10月(日付は決まり次第お知らせいたします)
現在調整中です。確定次第、お知らせいたします。

・第5回以降:未定です。基本的に、長期休暇以外の期間に、月に一度の開催を予定しています。報告を希望される方は、事務局までご連絡ください。


■研究書講読会:後期から開始予定でしたが、現在調整中です。


皆様のご参加をお待ち致しております。


連絡先:

太田麻希子・中村雪子
email:devgen.isgs@gmail.com
===転載可・ここまで===

2014年5月10日土曜日

2014年度第1回定例会記録(2014月4月12日開催)

201412日(土)に2014年度第1回定例会が開催されました。


・日時:201412日(土)13時半~17時半
・場所:お茶の水女子大学文教育学部号館304号室



■報告1:平野幸子(東洋英和女学院大学大学院 人間科学研究科修士課程)
タイトル:「家族性大腸腺腫症(FAP)女性の妊娠・出産・育児にまつわる支援への一考察」
■報告2:多田利恵子(東洋英和女学院大学大学院 人間科学研究科修士課程)
タイトル:「人身取引廃絶レジームの展開と課題――日本の事例を中心として」人身取引廃絶レジームの展開と課題――日本の事例を中心として人身取引廃絶レジームの展開と課題――日本の事例を中心として人身取引廃絶レジームの展開と課題――日本の事例を中心として

4月半ばだったので、ハナミズキもまだ開きかけでした

本定例会では、修士課程在籍中のお2人に、それぞれ取り組んでいる修士論文の内容を報告していただきました。主に医療の分野で研究が蓄積されてきた平野さんの研究に関しては、社会科学的かつジェンダーの視点から研究を発展させるために、主に研究手法に関して議論がなされました。また、日本における人身取引対策と国際的な潮流にかい離があることに問題意識を持って研究に取り組んでいる多田さんの報告では、幅広い領域にまたがる問題構成に対して、いかに具体的な事例から意義ある議論が可能か意見が交わされました。





--下記、報告の要約になります。

□平野幸子さん(東洋英和女学院大学大学院 人間科学研究科修士課程)
報告タイトル:『家族性大腸腺腫症(FAP)女性の妊娠・出産・育児にまつわる支援への一考察』
 家族性大腸腺腫症(FAP)は、1020歳頃から、大腸に多数の腺腫を発生し、放置するとほぼ100%大腸がんを発生する常染色体優性遺伝疾患である。治療法の一つには、がんが発生する前に、予防的に全大腸を摘出する手術がおこなわれることがある。手術を行うことにより、女性の生殖に影響することが分かっている。報告者は患者会への継続的参加経験から、FAPには遺伝性の病であることに附随して女性に特有の困難が生じているのではないかと着想し、研究に至ったものである。本報告では、患者会が発刊するニューズレターに掲載された記事を資料として、家族性大腸腺腫症女性の生殖に関連する問題や困難な状況を分析・考察した。次世代へ引き継がれ遺伝することは、女性の身体を通して行われる生殖に関連することから、女性に特化した支援の重要性を論じた。質疑応答では、女性の困難さや状況をさらに明らかにしていくために、患者会そのものの設立経緯や活動内容に関する追加調査の必要性が指摘された。


□多田利恵子さん(東洋英和女学院大学大学院 人間科学研究科修士課程)
報告タイトル:『人身取引廃絶レジームの展開と課題――日本の事例を中心として』
国連での人身取引禁止議定書採択以降、国際的に積極的な取り組みが進められる中、日本も人身取引対策に取り組んできた一方、その取り組みの速度や方向性は国内外から批判されてきた。報告者は、まず、国際的な人身取引廃絶の取り組みの展開を論じた上で日本の取り組みの現状を提示した。そのうえで、日本が人身取引廃絶レジームに適応しようとしつつもできていない要因を、ジェンダー的視座から日本の文化的社会的特性を考察することで明らかにしようと試みた。フロアからは、比較対象国の選択や分析視点、日本のNGOの展開を通して日本を研究する可能性などについて指摘があり、議論が展開した。



2014年4月28日月曜日

2014年度第2回定例会開催のお知らせ(2014年5月24日[第3土曜日])

2014年度第2回定例会開催のお知らせです。


今回は、この3月にお茶の水女子大学より博士号を取得された熊田陽子さんにご報告いただきます。

報告者:熊田陽子さん(日本学術振興会特別研究員-SPD)
タイトル:『「おんなのこ」として性風俗世界に生きる―ある東京の無店舗型SMクラブを通して見た都市的“性”様式に関する研究』
新緑の美しい季節ですね



東京都市部のSMクラブにおいて実施した長期にわたる参与観察を含めたフィールドワークから得られたデータを丹念に分析した、貴重な研究になります。

みなさまお誘い合わせの上、ぜひご参加ください。
ご出席希望の方は資料準備の都合上、5月21日(水)までに、devgen.isgs@gmail.comまでご連絡いただけますと幸いです。


どうぞよろしくお願い致します。
2014年度devgen事務局(太田・中村)
devgen.isgs@gmail.com


===転載可・ここから===

2014年度 国際ジェンダー学会「開発とジェンダー」分科会第2回定例会ご案内

・日時:2014年5月24日(土)14時~17時
・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館304号室


報告者:熊田陽子(日本学術振興会特別研究員-SPD)
タイトル:『「おんなのこ」として性風俗世界に生きる―ある東京の無店舗型SMクラブを通して見た都市的“性”様式に関する研究』

報告内容:
 本発表は、性の視点から人々のつながりを明らかにすることを目指す。そのために着目するのが都市世界である。世界的な都市化の進行を踏まえ、文化人類学を含め多くの領域において、都市を念頭においた研究が蓄積されている。そこでなされる指摘の一つに、都市世界内部の分断が挙げられる。都市世界では内部で境界が引かれ、極端な繁栄のすぐ隣に荒廃が確認されるような事態が顕著になっているという議論である。では、境界は都市世界に生きる人々、より正確にいえば人々が構築する関係に対して、どのような作用をもたらすのだろうか。既に確認されているのは、分断から生まれる境界によって、異なる生活世界が形成され人々の交流に断絶が生じるということだ。しかし本発表では、境界は何かを分けつつ接合するものであるという、境界の別の作用を重視する。分けられながらつながっていく人々のあり方を性の文脈から検討することで、現代の生に迫りたいと思っている。そこで分析の対象として据えるのが、適法的な性風俗産業に関わる人々によって構築される「性風俗世界」である。具体的には、東京都市部のSMクラブで実施した参与観察調査の成果に基づき、性風俗世界に関わる女性性労働者(「おんなのこ」)を中心とした検討を行う。その作業を通じて、都市で人々が行う生の実践の特質―本発表での「都市的“性”様式」―を明らかにし、境界の性とそこで構築されるつながりについて考えていく。


出席の方は、資料準備の都合上5月21日(水)までに下記アドレスまでご連絡いただければ幸いです。

email: devgen.isgs@gmail.com(太田・中村)

*会場最寄り駅
http://www.ocha.ac.jp/access/index.html
東京メトロ丸ノ内線「茗荷谷」駅下車
東京メトロ有楽町線「護国寺」駅下車

*当日は、正門よりお入り下さい。(南門は閉門しておりますのでご注意下さい)
*入構の際、身分証明書をご提示の上「開発とジェンダー」分科会とおっしゃってください。
*会場は正門から見て正面のキャンパスマップ中①になります。建物の中に入りましたら、左手に曲がって道なりに行くと教室があります。
http://www.ocha.ac.jp/access/index.html#no3

本年度の定例会は、研究報告と研究書の講読会を下記のように予定しています。

■2014年度定例会予定
・第3回 2014年6月28日(第4土曜日):
第一報告:工藤真紀さん(修士論文のための研究計画を報告してくださる予定です。)

第二報告:土野瑞穂さん(2014年3月にお茶の水女子大学より博士号を取得した際の、博士論文の内容を報告してくださいます。)

・第4回以降:未定です。基本的に、長期休暇以外の期間に、月に一度の開催を予定しています。報告を希望される方は、事務局までご連絡ください。


■研究書講読会については、決まり次第、おってお知らせいたします。



皆様のご参加をお待ち致しております。

連絡先:
太田麻希子・中村雪子
email:devgen.isgs@gmail.com
===転載可・ここまで===

2014年3月22日土曜日

2013年度第6回定例会記録(2014年3月22日開催)

2014年3月22日(土)に2013年度第6回定例会が開催されました。

・日時:2014年3月22日(土)1400~1700
・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館3階304号室 



報告:山本沙希(お茶の水女子大学 大学院博士後期課程)
タイトル:「アルジェリアにおける女性の組織化と地域開発:インフォーマル経済とアソシアシオンの関係から」

今回の定例会では、報告者は1人でしたが、なかなか聞くことができないアルジェリアにおける女性組織の事例報告ということで、質疑応答も含め約3時間の会となりました。北アフリカのイスラム圏でありポスト・コンフリクトという特徴ももつ調査地の詳細、調査対象女性組織の特徴や、また、マルチサイテッドな調査の試みでもあったため、それらの点に関心が集まりました。


下記、報告の要約になります。


本定例会では、アルジェリアの首都アルジェ旧市街で活動を展開する女性組織において、報告者が行ったインタビュー調査結果を中心に報告が行われた。報告者は、アルジェリア都市部で女性組織の活動が展開されてきた経緯を、事実上の内戦状態にあった1990年代初頭以降の情勢との関わりから論じたうえで、なかでも旧市街の女性組織は、地縁や密な人間関係によって成る「コミュニティ」に近いものであると位置づけた。さらに家内で行っている手工芸を主とする女性たちの活動をインフォーマル経済の一形態として捉え、女性たちにとっての活動の意義を明らかにする試論を提示した。

定例会当日はいい天気で、
白木蓮が満開でした