2014年7月5日土曜日

2014年度第3回定例会記録(2014月6月28日開催)

2014年6月28日(土)に2014年度第3回定例会が開催されました。


・日時:2014年6月28日(土)13時~18
・場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館3階307号室
そろそろ海が恋しい季節がやってきますね☆



報告1:工藤真紀(東洋英和女学院大学大学院国際協力研究科修士課程) 
タイトル:「インドのジェンダー暴力と「包摂」アプローチ――インドの現地NGOジャゴリが教えるものは何か?」
報告2土野瑞穂(お茶の水女子大学 リサーチフェロー)
タイトル:「『慰安婦』問題と『償い』のポリティクス――『女性のためのアジア平和国民基金』を中心に」


本定例会では、女性に対する暴力を共通項に、修士課程在籍中の工藤さんは修士論文のための研究報告を、土野さんは博士論文に基づいた報告をしてくださいました。


--下記、報告の要約になります。

工藤真紀さん(東洋英和女学院大学大学院国際協力研究科修士課程) 
タイトル:「インドのジェンダー暴力と「包摂」アプローチ――インドの現地NGOジャゴリが教えるものは何か?」
 インドの首都デリーにおいて、2004年から行われているデリーの市街を女性たちにとって安全な街にしようとする「セーフ・デリー・キャンペーン」キャンペーンが行われている。そのキャンペーンでは、現地NGO団体Jagoriが、 UN Womenや地方政府と協力して、「包摂」というポリシーに基づいて女性の社会参加を進めている。Jagoriは、デリーの市街地での活動や、女性の権利に関するワークショップを開くなど、女性の権利保護を訴えるアドボカシー活動を展開しているが、その活動の特筆すべき点は、「包摂」という基本理念ある。インドでジェンダー課題に取り組むNGOの戦略は、「トップダウン・アプローチ」から「ボトムアップ・アプローチ」へと変わってきたが、いまだにジェンダー暴力は根強く残っている。それに対して「包摂(inclusion)」を旗印にするJagoriの活動は、トップ・ダウンとボトム・アップを総合したより効果的なアプローチであることを論じた。質疑応答では、インドにおいて根強く残る、あるいは悪化している女性に対する暴力についての先行研究の更なるレビューの必要性や、分析方法に関する妥当性についてなどが指摘された。


土野瑞穂(お茶の水女子大学 リサーチフェロー)
タイトル:「『慰安婦』問題と『償い』のポリティクス――『女性のためのアジア平和国民基金』を中心に」

 博士論文の内容を抜粋・一部修正したものである本発表では、初めに「慰安婦」問題の解決を求めて20年以上にわたって継続されてきた日本国内外の運動を概観した後で、今日「女性のためのアジア平和国民基金」(略称アジア女性基金。以下同)を研究対象とする意義とその必要性が論じられた。次に、マーサ・ミノウの議論に立脚した本研究の分析視角についての説明がなされた。すなわち、いかなる対応措置も当該社会のあり方に規定されるという限界を踏まえた上で、被害者「個人」の痛みや苦しみとそれへの処し方に目を向けること、しかしその一方で、問題を「個人的なこと」として終わらせてはならず/終わらせることはできず、元「慰安婦」の女性たちそれぞれの被害を歴史的文脈に位置づけた上で「償い」の措置を考えなければならないという視点に立つことが提示された。その分析視角のもとで、アジア女性基金の発足から解散までの一連の過程について、アクターたちの相互作用に着目して考察が行われた。最後に、アジア女性基金を教訓として示唆される、「償い」に必要な要件が示された。質疑応答では、研究手法の説明と議論の提示方法について意見・提案がなされたり、「慰安婦」問題の歴史的背景や「慰安婦」問題をめぐる今日の日本の状況について活発な議論がなされた。