2022年3月14日月曜日

2020年度定例会開催記録

2021年3月14日に2020年度定例会が開催されました。


◆日時:2021年3月14日(日) 13時~16時半

◆オンライン開催(Zoomミーティング)

文献報告①
◆報告者:太田麻希子(立教大学)
◆質問者:鳥山純子(立命館大学)
◆文献:【検討文献第1章】Universal Access to Affordable Housing? Interrogating an Elusive Development Goal (Sussane Soederberg)
 
文献報告②
◆報告者:中村雪子(立命館大学 立命館アジア・日本研究機構)
◆質問者:大野聖良(日本学術振興会(RPD)、神戸大学)
◆文献:【検討文献第6章】Re-centring ‘Race’ in Development: Population Policies and Global Capital Accumulation in the Era of the SDGs
 
司会・趣旨説明:中村雪子(立命館大学 立命館アジア・日本研究機構)



下記、定例会の記録になります。

今回の定例会では、SDGs(持続可能な開発目標)をジェンダー視点からクリティカルに考えてみることをテーマにした読書会を開催しました。2回連続の企画の初回になります。当初昨年度末に計画していましたが、コロナ禍のため延期していたものです。
今回の内容は、SDGs(持続可能な開発目標)をクリティカルに議論している論文が収められているThe Politics of Destination in the 2030 Sustainable Development Goals(2017)から2本の文献を検討しました。

1本目の論文は、SDGsの目標11(住まい)に関係する内容で、グローバルな住宅目標と関連した重要な政策文書に焦点を当てたものでした。文書の分析の結果、ユニバーサルな住宅の課題を、① 国家の政策の失敗というだけ ではなくグローバルサウスのスラムに限定した問題としていること、② 住宅問題の著しい市場化が起きていることが明らかにされました。新自由主義的な政策がSDGsを通じて進行していることを批判的に実態把握し、オルターナティヴな住宅政策に取り組む必要があることが主張されています。報告者からは、住宅ローンの借り手に関して、移住やジェンダーの視点からコメントがありました。さらに、質問者から新自由主義をめぐっての論文の議論についてより複雑な理解が必要ではないかという指摘や、SDGs自体が新自由主義のより一層の進展に資するものになっているのではないかというラディカルな議論が提示されました。

2本目の論文は、現在の開発の枠組みをジェンダー化された人種の視点から再考する内容でした。自由主義・人種(ジェンダー化とセット)・資本蓄積の3つの要素が相互に関連し、植民地主義から継続して現在の開発の枠組みを作っていることが捨象されていることを問題視します。例として新自由主義の進展のもとフェミニズムの議論を換骨堕胎した性的自己決定を主要な軸とした人口政策が再び開発政策において盛んになっていることを分析します。その帰結として、新自由主義に親和的な人種化・ジェンダー化された「超勤勉な新自由主義的な起業家主体の生産」につながっていることが指摘され、結局のところ、SDGsは、植民地主義、そして、近代化発展主義の開発の時代を経て、なお、継続、もしくは強化されている資本蓄積に寄与するものとして構築され実践されていることが指摘される内容の論文でした。質問者からは、特に日本の若い女性を対象にしたフェミニズムやエンパワーメントをめぐえる近年の動きが新自由主義的な主体と親和性が高いのではないかといった議論が提示されました。

近年、日本社会においてもSDGsが企業を中心に取り上げられることが多くなっている中で、関心が高かったこともあり、全体の議論においても活発な議論が交わされました。

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