2015年6月21日に第1回定例会が開催されました。
日時:6月21日(日) 14時~17時
場所:お茶の水女子大学文教育学部1号館302号室
報告者:鳥山純子さん(日本学術振興会特別研究員PD)
報告タイトル:
人から考えるフィールドの描き方
ー00年代カイロの女性私立学校教員を事例に
Presenting a field as writing on people:
Contesting characteristics of female private school teachers in Cairo at the turn of the century
下記、定例会の記録になります。
本発表は、博士論文の執筆過程を振り返り、 論文執筆におけるフィールドデータと問題関心との関係を論じるも のだった。発表ではまず、 フィールド調査の方法論についてまとめた書籍を手掛かりに調査研 究の過程を大まかに整理し、 一つ一つの過程で調査者が抱く問題関心の批判的検討が不可欠であ ることが確認された。続いて、 発表者自身が博士論文執筆のために行った調査を事例に、 書籍で提示されているフィールド調査の「理想的な形」 を実践する難しさを検討し、発表者の場合はその難しさの一端が、 調査時における発表者自らの問題関心についての批判的検討の欠如 に起因するものであったと説明がされた。さらに、不十分な「 フィールドにおける思考」の結果として、 当初の問題設定を大幅に変更せざるを得なかった経緯と、 それを立て直すために、 手持ちのデータからストーリーを描きだした論文製作の行程が語ら れた。そして暫定的な結論として、 調査研究においては問題関心の批判的検討が恒常的になされる必要 があること、 とりわけ問題発見型のアプローチを援用する場合には、 常にデータが持つ複数の解釈の可能性を意識し、 調査者が従事する解釈のプロセスに自覚的になる必要が確認された 。鳥山の報告を受け、フロアからは、 問題関心の育て方についてそれぞれの参加者の興味や研究課程に沿 った具体的な質問が出された。
今回の議題は、発表者の研究内容そのものではなく、 そこに到る過程についてのものだったこともあり、 参加者全員が研究上のつまずきや今後の展開に関する不安を具体的 に語りながら議論をする機会となった。
朝もやに煙る山と三羽のツバメです。あまりに暑い日が続くので、和む画像を載せてみました。 |